自宅サロンは本当に稼げるのか調査
プロローグ
トリマーとして経験を積んでいると、
「このまま雇われて働くより、自分の店を持った方が収入は増えるのでは?」
と考えることがあります。
自分でトリミングサロンを開けば、料金設定も営業時間も自分で決められます。
指名客が多い人なら、
「独立した方が稼げそう」
と思うのも自然ですよね。
でも、独立を考えるときに年収だけを見るのは少し危険です。
なぜなら独立すると、
売上から店の家賃、水道光熱費、設備、消耗品、広告費などを全部自分で払う
ことになるからです。
さらに開業時には、ドッグバス、トリミングテーブル、業務用ドライヤー、ハサミやバリカンなども必要です。
最近では業務用設備の一部にリースを利用できるケースもありますが、何でも月額で借りられるわけではありません。
まず全体を見ると、独立後のお金はこんな構造です。
| 独立トリマーのお金 | 何を意味する? |
|---|---|
| 売上 | お客さんから受け取った料金 |
| 経費 | 家賃・設備・材料・光熱費など |
| 利益 | 売上から経費を引いた残り |
| 自分の収入 | 利益から生活費や税金などを考えて取るお金 |
| 開業資金 | 店を始めるために最初に必要なお金 |
「年収600万円」と書いてあっても、売上600万円なのか、経費を引いた後の所得なのかでは意味がまったく違います。
独立を考えるなら、年収と同じくらい「最初にいくら必要なのか」も見ておく必要があります。
1.独立トリマーの年収はいくら?まず「売上」と「手取り」を分けて考える
最初に知っておきたいのは、
独立トリマーだけを対象にした全国平均年収の公的統計は、確認できない
ということです。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」には、トリマーに対応する職業分類の年収として402.7万円が掲載されています。2025年の賃金構造基本統計調査を加工した数字です。
ただし、これは独立トリマーだけの数字ではありません。
そのため、
「独立したら平均402万円」
という意味ではありません。
独立後は、
客単価 × 頭数 × 営業日数
で売上が決まり、そこから経費を引いたものが利益になります。
たとえば月商80万円でも、80万円が収入ではない
イメージしやすいように、単純なモデルで考えてみましょう。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 月の売上 | 80万円 |
| 家賃 | 10万円 |
| 水道光熱費 | 5万円 |
| シャンプー・消耗品 | 4万円 |
| 広告・予約サービス | 3万円 |
| 通信・決済手数料など | 2万円 |
| 設備維持・その他 | 3万円 |
| 残る金額 | 53万円 |
これはあくまで説明用のモデルです。
ここからさらに税金、社会保険、将来の設備交換資金なども考えなければなりません。
逆に自宅サロンで家賃がほとんど増えなければ、同じ売上でも利益率は上がります。
つまり独立後の収入は、
「何頭切ったか」だけでなく「どれだけ経費を抑えられたか」でも決まる
ということです。
民間のトリマー向け転職情報では、オーナー1人の小規模サロンについて年収400万~600万円程度というモデルも紹介されていますが、これは全国平均を示す統計ではありません。
独立すれば必ず600万円。
そんな単純な世界ではないんですね。
2.トリミングサロンの器具はいくら?開業時の大きな出費を見てみよう
ここが今回かなり大事なところです。
トリミングサロンを始めるには、ハサミ一本あればいいわけではありません。
少なくとも、
洗う・乾かす・切る・安全に待機させる
ための設備が必要です。
現在公開されている開業情報や業務用品の価格を見ると、大まかな目安はこのくらいです。
| 設備・器具 | 大まかな価格帯 |
|---|---|
| トリミングテーブル | 3万~30万円程度 |
| ドッグバス | 10万~80万円程度 |
| 業務用ドライヤー・ブロアー | 5万~25万円程度 |
| ケージ・クレート | 2万~15万円程度/台 |
| ハサミ・バリカン・ブラシなど | 10万~30万円程度 |
| シャンプー・消耗品初期仕入れ | 3万~10万円程度 |
| 洗濯機・乾燥機 | 10万~40万円程度 |
| 消毒設備 | 10万~40万円程度 |
設備のグレードによってかなり違います。開業向け情報では、ドッグバス20万~80万円、トリミングテーブル5万~30万円、業務用ドライヤー5万~20万円程度を目安としている例があります。
業務用品販売サイトを見ると、より高機能な設備もあります。
たとえば業務用ドッグバスでは50万円を超える製品、ボックスタイプの業務用ドライヤーでは80万円を超える製品、シャンプーマシンでは60万円台の商品も実際に販売されています。
つまり、
「最低限で始める店」と「設備にこだわる店」では、100万円単位で差が出る
ということです。
特にお金がかかりやすいもの
わたしなら、開業時に特に警戒するのはこの4つです。
| 大きな出費 | なぜ高くなる? |
|---|---|
| ドッグバス | 給排水工事まで必要になる |
| 内装工事 | 防水・床・壁・排水などを整える |
| テナント契約 | 保証金・敷金・仲介料など |
| 業務用乾燥設備 | 高性能モデルは数十万円~ |
実は、
設備そのものより「設備を置くための工事」が高い
こともあります。
トリミングサロンではドッグバスを置くので、給水だけでなく排水も必要です。
床も普通の住宅と同じではなく、水・毛・汚れを掃除しやすい仕様にした方がいい。
そこまで考えると、
「バスが20万円だから20万円で設置できる」
とは限りません。
配管工事、給湯、電気工事、床工事などが追加される可能性があります。
3.自宅サロンとテナントでは開業資金が全然違う!リースは使える?
独立トリマーが最初に決めるべきなのは、
どこで営業するか
です。
自宅の一部を改装するのか。
テナントを借りるのか。
それだけで必要資金が大きく変わります。
2026年に公開されたトリマー独立開業の解説では、
| 開業スタイル | 初期費用の目安 |
|---|---|
| 自宅サロン | 200万~300万円 |
| テナント型 | 500万~800万円 |
| 移動・出張型 | 150万~250万円 |
という目安が紹介されています。
一方、別の開業情報では自宅型50万~150万円、テナント型300万~500万円程度という試算もあります。
かなり幅がありますよね。
これは情報が間違っているというより、
「すでに使える部屋がある人」と「水回りから全部作る人」では、同じ自宅サロンでも条件がまったく違う
からです。
だから現実的には、
自宅サロンなら
100万~300万円程度
小規模テナントなら
300万~800万円程度
くらいの幅を持って考え、実際の物件と設備で見積もりを取る方が安全でしょう。
内装にこだわったり、設備を新品で揃えたり、都市部のテナントを使ったりすれば、それ以上になることもあります。
実際、開業費を500万円以上とするシミュレーションもあります。
リースやレンタルはある?
あります。
ただし、
トリミング用品全部を気軽にレンタルできる
というイメージではありません。
業務用機器の販売会社や設備業者によっては、リース契約を利用できる場合があります。
また、特定のペット向け美容機器では、初期費用0円・月額リースという導入方法を提供している会社もあります。たとえばラテスパでは、対象設備を月額16,800円(税別)のリースで導入する仕組みを案内しています。
一般的には、
| 方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 新品購入 | 長く使える・自由度が高い | 最初の出費が大きい |
| 中古購入 | 初期費用を抑えやすい | 故障・衛生・保証を確認 |
| リース | 初期出費を抑えやすい | 総支払額は高くなる場合がある |
| レンタル | 短期間利用に向く | 業務用設備では選択肢が少ない |
開業ガイドでも、中古設備やリースを利用することで設備費を抑えられるとされています。
ただしリースは、
「安く買える方法」ではなく、「最初の現金支出を分散する方法」
と考えた方がいい。
数年間の契約になることもあるので、月額だけを見て決めるのは危険です。
中古はかなり使える。でもドッグバスは慎重に
中古のトリミングテーブルやケージなどを利用して、初期費用を抑える方法もあります。
ただし、
- 電動テーブルの昇降
- ドライヤーのモーター
- ドッグバスの排水
- 配管
- サビ
- 衛生状態
などは確認した方がいいでしょう。
特に居抜き物件では、配管詰まりやドライヤーの劣化、トリミングテーブルの昇降不良などをチェックすべきとされています。
安く買った設備が開業直後に壊れたら、
結局いちばん高い買い物
になります。
4.開業資金を全部使い切るのは危険!年収を安定させるには「運転資金」が重要
ここ、かなり見落とされやすいです。
開業資金として500万円用意した。
内装に200万円。
設備に100万円。
保証金に150万円。
広告に50万円。
全部使った!
「よし、オープン!」
……これは結構怖いです。
なぜなら、
オープン初日から予約が満席になるとは限らない
からです。
店を開けた瞬間から、
- 家賃
- 電気
- 水道
- シャンプー
- 通信費
- 保険
- ローン・リース
- 人件費
などが始まります。
だから開業費とは別に、
売上が安定するまで生活できる運転資金
を持っておく必要があります。
開業シミュレーションでは、トリミングサロンの初期費用837万円のうち、運転資金を380万円とする例もあります。
もちろん全員に380万円必要という意味ではありません。
でも考え方は重要です。
わたしなら最低でも「3~6か月」を見る
ここは公的な決まりではなく、経営上の安全策としての考え方です。
たとえば毎月、
- 店舗固定費 15万円
- 生活費 20万円
- その他 5万円
必要なら、
月40万円。
3か月なら120万円。
6か月なら240万円。
このくらいを別枠で持っておけば、
オープン直後に予約が少なくても、
「今日お客さん少ない!値下げしよう!」
と焦って経営判断を狂わせにくくなります。
開業費をざっくり分けるとこうなる
| 項目 | 自宅サロン | 小規模テナント |
|---|---|---|
| 物件取得 | ほぼ不要~ | 数十万~数百万円 |
| 内装・水回り | 30万~150万円超 | 100万~300万円超 |
| トリミング設備 | 50万~150万円 | 80万~200万円 |
| 消耗品・備品 | 10万~30万円 | 10万~30万円 |
| 広告・看板 | 5万~30万円 | 10万~50万円 |
| 登録・保険など | 数万円~ | 数万円~ |
| 運転資金 | 100万~200万円程度を検討 | 150万~300万円程度を検討 |
これはあくまで資金計画を考えるためのざっくりしたモデルで、地域・物件・設備によって大きく変わります。
でも、
「器具代だけ用意すれば独立できる」
ではないことは分かりますよね。
第一種動物取扱業の登録も必要
トリミングサロンは、動物愛護管理法上の「保管」に該当するため、営利目的で営業する場合は第一種動物取扱業の登録が必要です。
環境省によると、事業所・業種ごとに都道府県知事または政令指定都市の長の登録を受け、施設の構造や動物の管理などの基準を守る必要があります。
動物取扱責任者の配置も必要です。
自宅だから自由に営業できる、というわけではありません。
自治体の基準や住宅の用途、賃貸なら契約内容なども事前に確認する必要があります。
総集録
独立トリマーの年収について、全国共通の「平均○万円」という公的な数字は確認できません。
独立後は、
売上-経費=利益
だからです。
そして独立する前には、年収以上に、
「いくら用意すれば店を始められるのか」
を考える必要があります。
| 覚えておきたい数字 | 大まかな目安 |
|---|---|
| トリミングテーブル | 3万~30万円 |
| ドッグバス | 10万~80万円 |
| 業務用ドライヤー | 5万~25万円 |
| ハサミ・バリカンなど | 10万~30万円 |
| 自宅サロン開業 | 100万~300万円程度から検討 |
| テナント型 | 300万~800万円程度から検討 |
| 運転資金 | 3~6か月分を別枠で考えたい |
設備を中古で揃えたり、リースを利用したりすれば初期費用を抑えることもできます。
ただし、
一番安く開業することが、一番いい開業とは限りません。
犬を安全に扱う設備にはお金をかける。
見栄えだけの内装にはかけすぎない。
毎月出ていく固定費はできるだけ小さくする。
そして何より、
開店後に予約が安定するまでの現金を残しておく。
独立トリマーの年収を決めるのは、カット技術だけではありません。
「どれだけ売るか」と同じくらい、
「どれだけ残すか」
を見る必要があります。
トリマーからサロンオーナーになるというのは、給料が上がるというより、
自分で一つの商売を持つ
ということなんです。
よくある質問Q&A
Q1.トリミングサロンの開業にはいくら必要ですか?
条件によって大きく変わります。近年の開業情報では、自宅型で200万~300万円、テナント型で500万~800万円という目安があります。一方、既存設備を活用すればさらに抑えられる場合もあります。
Q2.トリミング用品はリースできますか?
一部の設備では可能です。また開業支援業者などがリースを扱う場合もあります。ただし、すべての器具で利用できるわけではないので、購入・中古・リースを個別に比較した方がいいでしょう。
Q3.一番高い設備は何ですか?
商品によって違いますが、ドッグバス、高性能ドライヤー、シャンプーマシンなどは数十万円する場合があります。業務用商品では50万円~80万円を超える設備も販売されています。
Q4.自宅サロンなら100万円以下でも開業できますか?
すでに使える部屋や水回りがあり、中古設備を利用するなど条件がそろえば可能性はあります。ただし、給排水工事や内装工事が必要になると一気に費用が増えます。設備費だけでなく、運転資金も残しておく必要があります。
Q5.開業資金はいくら余裕を持った方がいいですか?
店の規模によりますが、設備や内装費を使い切るのではなく、少なくとも数か月分の固定費と生活費を運転資金として別枠で考える方が安全です。特に家賃のあるテナント型は、オープン直後の売上不足に備える必要があります。
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