プロローグ
Sakana AI(サカナAI)について調べていると、「Google」「Transformer」「元外交官」という、妙に濃い経歴が次々に出てきます。
「結局、Sakana AIを作ったのは誰なの?」
ここが気になりますよね。
Sakana AIは、たった一人の天才が作った会社ではありません。
2023年、David Ha(デイビッド・ハ)氏、Llion Jones(リオン・ジョーンズ)氏、伊藤錬(Ren Ito)氏の3人によって東京で創業されました。
しかも3人の経歴を見ると、かなり役割が違います。
Google BrainでAI研究を率いていた研究者。現在の生成AIにつながるTransformerを生み出した研究者。そして、外務省・世界銀行・メルカリなどを経験した日本人ビジネスパーソン。
なぜ、この3人が東京でAI企業を作ることになったのでしょうか。
Sakana AIの創業者を知ると、この会社がなぜ他のAI企業と少し違うのかも見えてきます。
Sakana AI(サカナAI)の創業者は誰?3人を一覧で紹介
まず結論から。
Sakana AIは2023年7月、次の3人によって東京で創業されました。
| 創業者 | 現在の役職 | 主な経歴・特徴 |
|---|---|---|
| David Ha(デイビッド・ハ) | 共同創業者・CEO | 元Google研究者、Google Brain日本研究チームを率いた |
| Llion Jones(リオン・ジョーンズ) | 共同創業者・CTO | 元Google研究者、Transformer論文の共同著者 |
| 伊藤錬(Ren Ito) | 共同創業者・Chairman | 元外交官、世界銀行、メルカリ、Stability AIなどを経験 |
Sakana AI公式サイトでも、この3人が創業者として紹介されています。
ここで注目したいのが、3人とも同じタイプではないこと。
David Ha氏は「AI研究」。
Llion Jones氏は「生成AIの基礎技術」。
伊藤錬氏は「外交・法律・経営・事業」。
かなり乱暴にキャラクター分けするなら、
David Ha氏=AIを進化させる研究者
Llion Jones氏=生成AIの土台を作った研究者
伊藤錬氏=その技術を日本と世界につなぐ人
という組み合わせです。
技術者3人で会社を始めたわけではありません。
このバランスがSakana AIを見るうえで、かなり重要です。
創業者David Ha(デイビッド・ハ)は何者?Google Brainだけじゃない異色の経歴
Sakana AIのCEOを務めるのがDavid Ha氏です。
公式プロフィールによると、元GoogleのResearch Scientistで、Google Brainの日本研究チームを率いていました。
研究分野は、複雑な自己組織化システムやAIの自己進化など。
Sakana AIが掲げている、
「魚の群れのような集合知」
「自然界の進化からAIを考える」
という研究思想とも、かなりつながっています。
ところがDavid Ha氏の経歴を遡ると、最初からAI研究者だったわけではありません。
トロント大学でEngineering Scienceを学んだ後、Goldman Sachsに入社。
日本法人では金利取引に携わり、マネージング・ディレクターまで務めています。
その後、東京大学で博士号を取得し、Googleへ。
そしてGoogle Brainの研究者になりました。
つまり、
金融マン → AI研究者 → Google Brain → AI企業創業者
という、なかなか一直線ではない人生です。
現在Sakana AIが金融分野でAIの社会実装を進めていることを考えると、David Ha氏自身が金融の世界を知っているのも興味深いところです。
そして2023年、Googleを離れてSakana AIを共同創業。
現在はCEOとして会社を率いています。
Sakana AIが単純に「もっと巨大なAIを作ろう」とするのではなく、生物の進化や集合知をAIへ応用しようとしている背景には、David Ha氏が以前から研究してきたテーマが色濃く反映されていると考えられます。
Llion Jones(リオン・ジョーンズ)は何がすごい?ChatGPTにつながるTransformerの生みの親の一人
Sakana AIの創業者を調べていて、
「この人、そんなにすごい人なの?」
となりやすいのがCTOのLlion Jones氏です。
答えから言えば、現在の生成AIを語るうえでかなり重要な研究者です。
Jones氏はGoogle在籍中の2017年、研究論文
「Attention Is All You Need」
を共同執筆しました。
この論文で発表されたのが「Transformer」というAIアーキテクチャです。
名前だけ聞くと難しいのですが、ものすごく簡単に言えば、
現在の大規模言語モデルが発展する土台になった技術
と考えると分かりやすいでしょう。
ChatGPTなど現在の生成AIが急速に発達した背景にもTransformerがあります。
もちろんJones氏一人で作った技術ではありません。
「Attention Is All You Need」は8人の研究者による共同研究です。
ここは「Sakana AI創業者がChatGPTを作った」と誤解しないようにしたいところです。
Jones氏はその重要論文の共同著者の一人ということです。
公式プロフィールによると、英国ウェールズ出身で、バーミンガム大学でコンピューター科学とAIを学び、2011年にGoogleへ入社。
10年以上Googleで研究した後、2023年に退社してSakana AIを共同創業しました。
ちょっと面白いのが、
生成AIの巨大化を可能にした重要技術の研究者が、巨大AIとは違う方向を模索する会社を作った
という構図です。
Sakana AIは、大量の計算資源を投入して一つの巨大モデルを育てる方法だけではなく、複数のAIを組み合わせたり、生物の進化のようにAIを発展させたりする研究を進めています。
Transformerを生み出した側にいた研究者が、
「次も同じ方法でいいのか?」
と別ルートを探している。
Sakana AIが注目される理由の一つは、ここにあります。
日本人創業者・伊藤錬(Ren Ito)は何者?元外交官からAI企業へ
そして、もう一人。
日本人共同創業者が伊藤錬氏です。
AI企業なので「この人も凄腕プログラマーなのかな?」と思うかもしれません。
ところが経歴はまったく違います。
東京大学法学部を卒業後、2001年に外務省へ入省。
在米国日本大使館勤務のほか、日米安全保障や日EU経済連携協定の交渉などに携わり、総理大臣通訳官も務めています。
さらに世界銀行へ勤務。
その後はメルカリの執行役員としてグローバル事業を担当し、Stability AIでも経営に携わりました。
Sakana AI公式の採用ページでは、
- 東京大学法学部卒
- ニューヨーク大学ロースクール修了
- スタンフォード大学院修了
- ニューヨーク州弁護士資格
という経歴も紹介されています。
……AI研究者とは、かなり違う世界を歩いてきた人です。
だからこそ3人の組み合わせが面白い。
研究者だけでは、
「すごいAIは作れた。でも社会でどう使う?」
という問題が残ります。
特にSakana AIが現在進めている金融、防衛、行政などは、技術だけ知っていれば参入できる世界ではありません。
政府、企業、法律、国際社会との関係まで理解する必要があります。
伊藤氏はSakana AI創業について、日本の技術をもっと世界へ届けたい、グローバル企業を日本から作りたいという思いがあったことを語っています。
つまりSakana AIには最初から、
「世界レベルのAIを研究する」だけでなく、「それを日本から世界へ出す」
という構想があったことになります。
なお、過去の記事では伊藤氏を「COO」と紹介しているものもありますが、2026年9月現在のSakana AI公式Corporate Informationでは「Co-Founder & Chairman」となっています。
古い記事と現在の役職が違って見えるのは、このためです。
なぜSakana AIの創業者3人は日本・東京を選んだのか?
ここまで3人の経歴を見ると、別の疑問が出てきます。
David Ha氏とLlion Jones氏ほどの研究者なら、
「シリコンバレーで会社を作った方がよかったんじゃない?」
と思いませんか。
ところが3人が選んだのは東京でした。
Sakana AIは公式に「Tokyo-based Frontier AI R&D company」と位置付けています。
そして伊藤氏は、Sakana AIについて「日本からフロンティアAIを」という方向性を明確にしています。
経済産業省のMETI Journalでも、伊藤氏は創業時の考えとして、
米国の後追いをせず、使えるものを作る
という趣旨を語っています。
ここがSakana AIの面白いところです。
OpenAI、Google、Anthropicなど米国勢と同じように、
巨大な計算資源を使って巨大モデルを作る。
その競争をそのまま追いかけるのではありません。
Sakana AIは、
- 生物の進化
- 魚の群れのような集合知
- 複数AIの組み合わせ
- AI自身による研究・改善
など、別のアプローチを模索しています。
そして現在は研究だけでなく、金融、防衛、インテリジェンスなど日本社会へのAI実装も進めています。
これは創業者3人の経歴を並べると、かなり腑に落ちます。
David Ha氏が「新しいAIの仕組み」を考える。
Llion Jones氏が世界最高水準のAI研究を支える。
伊藤錬氏が日本の企業・政府・世界との接点を作る。
もちろん実際の会社は約150人規模まで拡大しており、「3人だけで全部やっている」という意味ではありません。
ただ、
なぜこの会社が「研究」と「日本への社会実装」を同時に進めているのか。
創業者を見ると、その理由が見えてくるんです。
Sakana AIの強みは、一人のスター研究者ではなく、最初から役割の違う3人が組んだことなのかもしれません。
総集録
Sakana AI(サカナAI)の創業者は誰なのか。
答えは、David Ha氏、Llion Jones氏、伊藤錬氏の3人です。
2023年7月、この3人によって東京でSakana AIが設立されました。
整理すると、
- David Ha氏:元Google Brainの研究者。現在はCEO
- Llion Jones氏:Transformer論文の共同著者。現在はCTO
- 伊藤錬氏:元外交官・世界銀行・メルカリなどを経験。現在はChairman
となります。
ただ、3人の肩書だけ覚えてもSakana AIの面白さは半分しか見えません。
重要なのは、3人の能力がかなり違うことです。
最先端AIを研究できる人。
生成AIの基礎技術を生み出した人。
政府・法律・国際社会・企業を知っている人。
この3方向が最初から組み合わされています。
だからSakana AIは研究論文を発表するだけでなく、金融、防衛、行政など日本社会へのAI実装まで急速に進んでいるのでしょう。
「Sakana AIの創業者は誰?」
そんな素朴な疑問から調べ始めても、最後に見えてくるのは、
「なぜ、この会社が短期間でここまで注目されたのか」
という答えです。
技術だけでもない。ビジネスだけでもない。
異なる経歴を持つ3人を最初から組み合わせたこと自体が、魚の群れから「集合知」を考えるSakana AIらしい創業だったのかもしれません。
よくある質問Q&A
Q1.Sakana AI(サカナAI)の創業者は誰ですか?
David Ha(デイビッド・ハ)氏、Llion Jones(リオン・ジョーンズ)氏、伊藤錬(Ren Ito)氏の3人です。2023年に東京で共同創業しました。
Q2.Sakana AIの社長・CEOは誰ですか?
2026年9月現在、公式Corporate InformationではDavid Ha氏がCo-Founder & CEO、伊藤錬氏がCo-Founder & Chairman、Llion Jones氏がCo-Founder & CTOとされています。
Q3.Sakana AIの創業者に日本人はいますか?
はい。共同創業者の伊藤錬氏が日本人です。元外交官で、世界銀行、メルカリ、Stability AIなどを経験しています。
Q4.Sakana AI創業者がChatGPTを作ったというのは本当ですか?
その表現は正確ではありません。Llion Jones氏は、現在の大規模言語モデルの基礎技術となったTransformerを発表した2017年の論文「Attention Is All You Need」の共同著者の一人です。ChatGPTそのものを開発した人物という意味ではありません。
Q5.なぜSakana AIは日本で創業したのですか?
創業者たちは東京を拠点に、米国企業の後追いではないAI研究と、日本の産業・公共分野へのAI実装を進めています。伊藤錬氏も、日本の技術を世界へ届け、グローバル企業を日本から作るという趣旨の考えを語っています。


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